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【2017/09/23 03:51 】 |
蜘蛛草紙:1
昔話を一つ。



舞台は日本。時は江戸。

鎌倉より北、山間の集落。


薄暗い洞窟の中に、幾つもの卵が並んでいる。

大きさは掌を大きく開いた程度。

ぬらぬらと鈍く光る殻は、鳥のものではなく虫のそれだ。

卵の並ぶ中に、小さな影があった。

赤い着物を着た少女だ。

期待を込めた視線が、卵へと注がれる。

まるで見つめれば卵が孵るとでも言わんばかりに、じっと眺める。



ぱきり。

そのうちの一つが音を立て割れた。



キチン質の殻を割りながら、もぞもぞと蠢く生まれたばかりの蜘蛛。

普通の蜘蛛と違うのは、その大きさ。

大人の両手に収まらぬ位の、巨大な蜘蛛が、粘液に包まれた身体を外界へと投げ出した。



「ばあさま、ばあさま。生まれたよ」



少女は大きな蜘蛛をひょいと持ち上げ、嬉しそうに母屋へと駆け出した。







日本に栄えし土蜘蛛一族。その数ある分家の一つ、七星家。

この家系の特徴は名の伝える通りである。

つまり、七星。

蜘蛛童は背に七の斑点を持ち、土蜘蛛となってもそれは痣となり残る。







「ねえばあさま。約束だよ」



少女が、祖母と思しき人物へ蜘蛛を渡して言う。



「次に生まれた童は、私が育てるって約束だよ。私だって、母様や姉様みたいに、できるもの」



老齢の女性は、皺だらけの顔をほころばせて、ゆっくり頷いた。



「いいんだね?私が育てて、いいんだね?」



手元に戻ってきた蜘蛛を、空に届けとばかりに持ち上げる少女。



「よかった!これからはずっと一緒よ、蜘蛛童!」



ぎゅっと抱き締める。きゅうきゅうと啼く蜘蛛。



「そうね、名前を決めなきゃ。私、ずっと、ずーっと待ってたの。……やっと、時が充ちたのね」



何かを思いついたのか、ぱっと花が開くように笑顔を見せた。



「充ち……充……お前の名は充!決まったわ!」



蜘蛛童は応えるように、きゅうと啼いた。
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【2008/01/12 02:28 】 | 七臥 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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